【お勧めのビジネス書】
書籍:ひらめきはカオスから生まれる
著者:オリ・ブラフマン/ジューダ・ポラック 共著 金子一雄 訳 出版社:日経BP社
革新的なビジネスを生み出すカギは、「カオス」にあり!カオスによって、優れたひらめきを生みだす方法を解説する。
●人生であれ仕事であれ、「穏やかなカオス」は不可欠だ。
異質の人材を輪に加えたりすることのメリットは、計り知れない。
●カオスは、まず「余白」をつくり出す。
そして、それが「異分子」の入り込む余地となる。
そこから、思わぬ結果が生まれる。
これを「計画されたセレンディピティ(偶然)」と呼ぶ。
このことを、中世のルネッサンスで説明すると次の通り。
・中世の教会は排他的で、外部の知識を吸収できず弱体化していた。そうした中、ペストで多くの聖職者が死ぬ(余白)。
・その結果、以前であれば聖職には不向きと判断した人材を登用する(異分子)。
・新たに登用された聖職者の大半は、人文主義的な思想を支持し、古代の思想家・芸術家などへの崇敬の念を協会に持ち込んだ。
これが連鎖作用を生み出し、ルネッサンスの先駆けとなる(計画されたセレンディピティ)。
●アインシュタインが「特殊相対性理論」を思いついたのは、眠りに落ちる間際で、「一般相対性理論」を思いついたのは、椅子の背もたれに体を預けた時だった。
いずれも、物理学には意識を集中していない、「余白」の時であった。
●人間が特定の課題に取り組んでいない時、つまり脳が「余白」の状態にある時は、「後帯状皮質」(過去の出来事に関する記憶をつかさどる)など、脳の特定の部分が自動的に活動する。
この余白状態が、思いがけない発見や気づきにつながる。
●出来事が生じる時、そこには人間が練り上げた「計画」と、人間が全く制御できない「偶然」とが関与する。
そして、両者の中間に「計画された偶然」が存在する。それを呼び起こすための”条件”を整えることは、人間の力でも可能である。
<こんな状況にある方に本書はおすすめ>
・会議でアイディアを募っても出てこない。良いアイディアがあっても上層部で握り潰される
・オフィスですぐ近くにいることを知らずに社内メールでやりとりしていた
・組織の風通しが悪いと感じている
・画期的な商品を開発したいのに、これまでの延長の企画しか出ない
内容はタイトルの通りの本で、「穏やかなカオス」を人生や仕事に持ち込むことはプラスになるというのが本書の内容です。
書かれているのは、ひらめきを生むような創造力を発揮するには、1思考の空白を作る2組織に異分子を混ぜる3計画的に偶然を起こすの三点ですが、そのことを証明する事例が結構面白い内容になっています。
例えば中世ヨ-ロッパに大打撃を与えたベストが極めて宗教的であったヨ-ロッパ社会の異分子であり、その結果ルネッサンスに繋がるヨ-ロッパの改革を生んだとの見解や、アメリカが日本に教育分野で成果が上がらないのは学習プログラムの問題ではなく、休み時間が少ないからとの見解はなかなかのものだと思います。。
カオスという言葉にはネガティヴなイメ-ジがつきまといがちですが、創造や再生といった点から見ますと悪いことばかりではないのです。
とはいえ極端なカオスは企業に混乱を生むので、穏やかなカオスを意図的に起こす仕組みを作ることが筆者が効果的だと話したいことだと思います。
組織にひらめきやイノベ-ションを起こしたいと思っている人には読む価値のある本だと思います。