お勧めのビジネス書★『知性を磨く』
書籍: 知性を磨く
著者: 田坂 広志 著 出版社:光文社
「知性」を磨くにはどうしたらよいのか?知性の定義を出発点に、知性を鍛えるための方法を説く。
●「知性」と似た言葉に「知能」がある。だが、次の通り、全く逆の意味の言葉である。
・「知性」:「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力。
・「知能」:「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見いだす能力。
●知能が、答えの無い問いに直面した時、「まあ、いいか」と「割り切り」を行う。その心の姿勢は「楽になりたい」という思いだ。
楽になることを求め、割り切りに流されると、深く考えられず、「答えの無い問い」を問う力、知性の力が衰える。
●知能の他、「知性」と似て非なる言葉に「知識」がある。多くの本を読み、どれほど知識を身につけても、知性は身につかない。
なぜなら、知性の本質は知識ではなく「智慧」だからだ。知識とは「言葉で表せるもの」で、書物から学べる。智慧とは「言葉で表せないもの」で、経験からしか学べない。
●真に知性を磨くためには、次の2つの事が求められる。
・「答えの無い問い」を問う力を身につけること
・「知識と智慧の錯覚」の病に罹らないこと
●今日、人生や仕事における困難な問題を解決するには、「垂直統合の知性」が欠かせない。
すなわち、「思想、ビジョン、志、戦略、戦術、技術、人間力」という「7つのレベルの思考」を並行して進め、それらを瞬時に統合できる「スーパージェネラリスト」が求められている。
●我々は、無意識に、自分の思考を、自分が得意だと思っている思考のレベルに限定してしまう傾向がある。
この「自己限定」を捨てることで、7つのレベルの思考が身につく。
「知性を磨く」という言葉には不思議な魅力を感じますが、その「魅力」の中には罠があることに気づかされます。
例えば、個人的に古典を読みたい時期がありましたが、なぜ古典を読みたくなったのかをこの本を読んでから振り返ってみると、古典のどこかに「答え」が書いてあることを期待していた自分が見えてきます。
もちろん、古典を読まないよりは読んだ方がいいと思いますし、さらに言うと、「知識」を身につけないよりは身につけた方がいい。
問題は、「古典」や「知識」を身につけることで、目の前の他人よりも「意識と無意識の境界」において自分自身の心の位置を上に置き、いわゆる「上から目線」で他人との関係性における心の葛藤を避けようとする安易さがその目的にあるとすれば、ほとんど役に立たないものに終わってしまうということでしょうか。
この本で重視していることは、「目の前の現実を変革する」ことにあります。
もちろん、現実を「解釈する」ことも重要な仕事であると思いますが、「解釈する」だけでは目の前の現実を変えることはできません。「変革する」ためには、心の葛藤から逃げることはできませんし、他人との関係性における心の衝突もしばしば発生することが予想されます。しかしながら、そのことから逃げずに行動していくことで、「知識」が「知性」となり、「解釈の知性」が「変革の知性」へと高まっていくのでしょう。
自分自身の「安直な精神」を炙り出し、今の自分自身が「中途半端」であることを単刀直入に叱ってくれた本でした。
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